- 体内においては「胞中」より発生する。
「胞」は女子胞(子宮)ではなく膀胱と考えるのが自然であり、楊上善もそう注釈していることなどが【こちらの文献】で語られております。
もっとも、子宮や膀胱と言っても、それらと現代人にとっての子宮や膀胱とは概念が異なりますので、督脈が胞中より起こるとされていることの意図をくもうと思えば、ここでは東洋医学における膀胱の意味付け、また、それ以上に、膀胱の主である腎の意味付けを東洋医学概論などで学ぶことが必要です。そうすれば、「胞」が膀胱であっても──むしろ、膀胱であるからこそ──督脈は女子胞にも影響を与え得ること、加えて、男性の生殖器にも影響を与え得るのが当然であることが見えてくると思います。 - 体表においては「会陰部」より出現する。
外生殖器と肛門との間を意味する「会陰」は「任脈」の経穴名でもありますが、督脈・任脈ともに、胞中で発生した後は、体内を下って会陰より表出すると言われております。
会陰から体表へ出た後は、長強から齦交へ、各経穴を結んだルートを上っていきます。 - 脳に入る。
髄膜炎やてんかん発作などでは、背筋を反らせてケイレンする(後弓反張、角弓反張)と共に意識障害を起こしたりすることもある訳ですが、こういった現象も督脈の病として認識されていたであろうことが推察されます。
学校の教科書では「外後頭隆起直下[風府]に至り脳に入る」とありますが、風府の次の経穴名は文字通り「脳戸」です。督脉は、風府の位置を越えた後、枝分かれして、体表を行く流れは脳戸から次の経穴へと順に行き、体内を行く流れは脳戸あたりから脳へと入っていくと覚えて良いでしょう。
『新版 経絡経穴概論(第1版4刷)』(医道の日本社)に準拠。